私はミホ、29歳。都内の広告代理店に勤める、まあまあ普通のOLだ。
最近ようやく新しい恋人・タクヤができて、平和で穏やかな春を過ごしていた……はずだった。
それはある日曜の昼下がり、ソファで寝そべりながらインスタをぼーっと眺めていたときのこと。
「知り合いかもしれません」ゾーンに、ありえない顔ぶれが並んでいた。
――元彼、カズキ。
ああ、まあそりゃあ仕方ない。大学時代の恋人だし、共通の友人もいるしね。
でもその隣にいたのは……
――元々彼、タケル。
いやいや、あんた誰から情報吸い取ったの?インスタの中にスパイでもいるの!?
私、別に元々彼とはSNS繋がってないし、共通のフォローもないはず。なんで出てくるの!?
しかも、プロフ写真が「筋トレ前の俺」みたいな上裸。どこからどう見ても“知りたくなかった情報”。
だが驚くのはまだ早かった。
画面をスクロールすると、さらに“元の系譜”が続いていた。
元元元彼・ジュンヤ、元元元元彼・カイ、
一夜限りの彼・ナオキ(私が「運命かも…」とか思って3日で終わったやつ)、
挙句の果てには、合コンでLINE交換しただけで既読スルーしたユウサクまで登場。
インスタよ、お前どこまで知ってるの!?
私の恋愛履歴をGoogleカレンダーと同期してるのか!?

しかも、なぜか全員がイケてない写真を使っている。
・サングラスかけて顔が半分以上見えないカズキ
・ジムの鏡越しに自撮りしてるタケル(たぶんズボンのチャック空いてる)
・フリー素材みたいな富士山を背景にしたジュンヤ(なぜ富士)
・そしてカイはまさかの「犬との2ショット」…その犬は他人の犬だろ!
私の脳内で、警報が鳴り響いた。
「これはアルゴリズムによる呪いだ……!!」
タクヤといい感じなのに、突然こんな“恋の亡霊行列”を見せられては、心が揺らいでしまうじゃないか。
「今の彼と比べてどうだったか?」みたいな、地獄の比較大会が始まってしまう。
あの日の夜、タクヤが笑顔で「ミホ〜、今日何してた?」と聞いてきたとき、
「うん、別に。元彼のアルバムめっちゃ見てた」なんて言えるわけがない。
私は決意した。
これはアルゴリズムとの戦いだ。自分の過去と未来を切り分けるため、私は立ち上がった。
【アルゴリズム撃退作戦・第一弾】
「表示された元彼たちをすべてブロックする」
……のだが、思い出せない。
「ジュンヤって、漢字どう書いたっけ?」「カイの名字…名字…!」
記憶の彼方にある男たちは、呪文のような曖昧なスペルで登録されていて、検索しても出てこない。
ブロックするどころか、再接触すら難しいのだ。
【アルゴリズム撃退作戦・第二弾】
「共通の知人をすべてフォロー解除する」
……これも無理。なぜならその知人たちは、会社の先輩だったり、親戚のいとこだったり、
人生から抹消できない人間ばかりだった。
「お疲れさまです、フォロー解除しました」なんて言えるか!
【アルゴリズム撃退作戦・最終手段】
「インスタやめる」
ここまできて、私はインスタに勝てないことを悟った。
あいつは私の恋愛履歴、友人関係、スマホの位置情報まで見透かして「知り合いかもよ♡」と笑ってくる、
まるで恋愛ホラー映画のラスボス。
しかしこのまま負けるのもシャクだった。
せめて、少しでも優位に立つために、私はとっておきの反撃を試みた。

【最終奥義:今彼とのラブラブ写真を投稿】
コメント欄には「素敵〜!」「お似合い!」の声。
それに混じって、元彼・カズキのアカウントから「いいね」が押されていた。
なにっ!?
おまえ……見てたのか……!
恐るべきは、アルゴリズムよりも、元彼の執念である。
それでも私は今日もインスタを開く。
あの「知り合いかもしれません」ゾーンに、いつか“未来の旦那かもしれません”が出てくることを信じて――。
名言風の締め:
「過去の恋は、削除できない。だが、フィルターはかけられる。」


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